地獄はなぜ長い

緊急事態宣言が延長になりました。

お店は休業中です。

だがしかし、毎日、怖い話を聞きながら、若旦那の昼ごはんを作るのが楽しみになっています。

まだ夏休み気分です。

こんにちは、トミー・アクセラレータです。

8月は、色々ありました。

お盆ら近辺は、たくさん。

小さな事から大きな事まで。

お盆なのに、夏ぽくなくて、雨が降ったりして少しばかりヒンヤリして。

ご先祖様をお迎えに行って、生前故人達が好きだった食べ物お供えしたりして、ご先祖様に満喫頂いて、ご先祖様を翌日お見送り、というタイミングで、我が家の愛犬ジョーくんが旅立ちました。

その日は終戦記念日という事もあって、シネマテークで述べ5時間ばかりの特集映画があったりして、どうしよう、観るべきかな、今こそ、観ておくべきかな、なんて思い倦ねながらシネマテークに予約電話しようかな、のタイミングで母から電話。

「ジョーが変なんだけど」

うちは二世帯になっていて、ジョーくんがいるのは母屋。

母と一緒に暮らしていました。

すぐいく、と言って階下に向かいました。

すると仕事に行ったはずの若旦那が、ちょうど早く切り上げて帰ってきて、ハチアワセ、共に母屋に行きました。

ジョーくんは廊下に横たわっていて、瞬きもせずに一点を見つめて痙攣していました。

心臓が悪くなって、何年前からか、お薬を飲んでいて、ずっと苦しそうに咳き込んでいる毎日ではあったのだけど。

父親も心臓が悪くて、心臓から来る咳だと、お医者さんに言われていました。

ジョーくんも、父とおんなじ。

でも今回は、いつもの咳ではない。

くえっ、くえっ、くえっ、と3回くらい鳴き声ではない声で少し鳴いて、動かなくなりました。

母は気づかずに、ずっとジョーくんに話しかけていました。

私は少しの間言い出せなくて、認めたくないのもあって、束の間黙っていて、でも、

「もう、動いてないよ」

と母に言いました。

私は、ジョーくんのフカフカに顔をうずめて泣きました。

この日がいつか来る事は分かっていたけど。

しばらく自分の皮膚でフカフカを感じていました。

映画行ってしまわなくて良かった。

5時間もある映画じゃ、帰ってこれなかったよ。

ジョーくんの死に目にあえて、自分の腕の中でジョーくんを看取れてよかった。

凄く可愛いお顔で、優しいお顔で、目はでっかくて閉じれなかったけど、全然怖くなくて、まだ生きているみたいで、瞳がキラキラしていました。

しばらく一緒にいて、お話してました。

不思議な時間でした。

約16年。

だいぶ、おじいちゃんです。

大往生です。

私の記憶は、ジョーくんを家に連れ帰ってきた時間に戻りました。

朝起きると、ジョーくんがいる。

あんな幸せな瞬間あったかしら。

本当に幸せでした。

目覚めたら大好きな子がいるんです、お部屋の中に。

あの幸せを反芻していました。

その当時、「どうしてジョーくんはウチに来てくれたの?」と占ったら、母の為、と出ました。

私の母の為。

確かに母に笑顔が増えた。

滅多に笑わない母が自然と笑うようになった。

ジョーくんの事を、可愛い、可愛い、と言っていた。

私が、一目惚れしたコだからね、ジョーくんは。

次の日の朝、母と一緒にジョーくんを焼き場に持って行った。

小さな骨壷に入れてもらった。

頭の骨はジョーくんの形のまま残ったので、少し大きめの骨壷に変えてもらった。

ジョーくんのお葬式から帰ってきたのに、ジョーくんが家で待っている錯覚。

お庭に出ればジョーくんが遊んでいる錯覚。

暑い日は、玄関の日陰にジョーくんがいる錯覚。

いなくなっちゃった。

うん、いなくなっちゃった。

カフカは、触れなくなっちゃったけど、この手に感覚が残っている。

ジョーくんを抱っこすると、僕の心の柔らかい場所がクルクル動きだしたのを憶えている。

反対周りに回っていたものを、回るべく方向に戻してくれるみたいな、そんな感覚。

ジョーくんが最初にウチに来た時は、そんな感覚。

このコ、太陽のコだね。

と、ジョーくんを初めて見た時、そんな風に言ったお客様もいました。

終戦記念日に旅立っていったジョーくん。

ご先祖様が一緒に連れて行ったんだな。

生きる、を頑張ったジョーくん。

寝て、起きて、ごはん食べて、お散歩して、寝て。

ワンコの生活は至ってシンプルだが。

それが、幸せなのだなぁ、と、寝て、起きて、ごはん食べて、私も思った。

そのシンプルを、好きな人達と出来るだけ長く、楽しみたい、というシンプル。

とてもむつかしいのだけど。

ジョーくんが旅立って、そのシンプルを、私は今、まだ、この世界線でやっている。

毎日ほぼ、同じことの繰り返し。

今は、こんな世で、外出もままならなくて、特になんの刺激もなく、誰に会うこともなく、ぼやんとした毎日。

たがしかし、私は今それが大変心地よくて、YouTubeの怖い話を聞きながら、若旦那に昼ごはんをつくる、おうちの事をする、が最高に平和で幸せを感じています。

小さい頃を思い出します。

同じ事の繰り返しの日々だけど、感性は日々育っていった。

きちんと感じていたあの頃。

五感で全てを感じていた頃。

平凡な事や、なんて事ない物に、いちいちワクワクしていたあの頃。

特に何もしていないけど、かつての夏休みが蘇ってきた夏休みでした。

ジョーくんが私の中のモヤモヤを、全部持っていってくれたのかくらい心の中が静寂で、嵐が止んだみたいです。

でも、また、嵐が来そう。

山の天気とトミーの心中は変わりやすい。

心の中も、そうやって、お天気が変わりゆく。

でも、極力シンプルに、丁寧に、時間を味わってゆきたいものです。

Rest in peace ジョーくん

そして、Rest in peace チャーリー

追伸:トミーは毎日ベースを弾いています。若旦那のサキソフォンに合わせたりしています。若旦那の知らない曲なのに、ランバダとか送り込んで遊んでいます。ランバダのベース、小指がおっつかないんだよ。あんまり上達はしていませんが、楽しんでいます。そう、楽しんでいます。忘れないでね、楽しんでいます。